今年の1月から3月まで、日本テレビ系列局で放送されていたドラマ『冬のなんかさ、春のなんかね』をご覧になっていらしたでしょうか? 杉咲花さんが主人公の土田文菜を演じていました。
ドラマの終盤で、文菜が「マフラーを編む」ということが重要なエピソードとなっていたのですが、その編み物シーンの裏には当協会会員のイデガミアイさんの協力があったのです。イデガミさんに、どのようなお仕事だったのかをお聞きしてみました。

――ドラマへの関わり方はどのようなものだったのですか?
イデガミさん 編み物に関する企画・制作および監修という立場で携わりました。具体的には、作中に登場するマフラーの企画・制作を担当し、撮影シーンごとに使用するマフラーを複数制作しました。また、編み物シーンの監修として撮影に立ち会い、俳優さんへの技術指導も行いました。
――面白かったことや、やりがいを感じたことなどはありますか?
イデガミさん 役柄の設定に合わせて作品の完成度を調整したり、(シーンごとに複数用意した)すべてのマフラーが同じものに見えるように揃えたりと、普段の編み物制作とは異なる視点で向き合えたことに面白さを感じました。
最終回でマフラーをすべてほどいて糸の山にするシーンがあったのですが、打ち合わせの際にそのお話を聞いていたので、撮影時にスムーズにほどけるように、通常とは異なる糸始末の方法を採用しました。
台本や現場での意図を踏まえ、いくつかの方法を検討しながら最適解を探った点も印象に残っています。単に美しく仕上げるだけでなく、「映像としてどう見えるか」「撮影でどう扱われるか」を意識しながら制作することに、難しさと同時に大きなやりがいを感じました。
――大変だったことはありますか?
イデガミさん 糸選びに苦労しました。打ち合わせ時に糸の太さや色の希望を伺っていましたが、それに加えて制作に必要な数量を確保できるかどうかも重要な条件でした。そのため、太さ・色・在庫の3点を満たす糸を探す必要があり、条件に合うものを見つけるまでが大変でした。
――放送を見てのご感想をお聞かせください。
イデガミさん 放送を通して拝見し、一つひとつのシーンが丁寧に創り上げられている様子に、改めて感動しました。
編み物のシーンでは、俳優さんの所作がとても自然で、丁寧に取り組まれている様子が画面越しにも伝わり、とても嬉しく思いました。視聴者として作品を楽しむと同時に、制作に携わった立場としても貴重な経験になったと感じています。
撮影に登場したマフラーの一部と台本。写真はイデガミさん提供
あとでほどく必要を加味して、糸始末に思いを至らせるなんてさすがですね。編み物知識の引き出しがたくさんあるからこそ、ドラマの中で生きてくるマフラーの提案ができるのだと感じました。
マフラーのデザインも、普段のコーディネイトがおしゃれな文菜が選びそうなもので、かつ初心者でも編めそうな難易度、という感じで、企画にぴったりだったのではないでしょうか。
イデガミさん、貴重なお話を聞かせてくださり、ありがとうございました。